投資も「社会貢献」を求める時代。いま富裕層が指向する「ESG投資」と「インパクト投資」を解説

2023/1/24

著者/丸山優太郎

サステナビリティ(持続可能)な社会を目指す現代においては、投資も「社会貢献」を求められています。なかでも富裕層が指向しているのがESGにかかわる投資です。実に4割を超える富裕層が自らの資産運用にサステナビリティの視点を求めている、とのレポートも発表されています。本記事では、いま注目を集める、ESG投資、インパクト投資といった社会貢献性のある投資方法を解説します。

現代の富裕層は投資に社会貢献を求める傾向

フランスのグローバルコンサルティング企業であるキャップジェミニが発表した『ワールド・ウェルス・レポート2022』によると、資産100万ドル以上とされる2021年の世界の富裕層人口は7.8%増加して2,200万人を超え、資産総額も8%伸びて約86兆米ドルに達しています。

レポートでは超富裕層(資産3,000万米ドル超)の78%、若年(40歳以下)富裕層の40%が「自らのウェルス管理会社が運用する各種商品についてESGスコアの提示を求めることもあり得る」としています。
参考:THE WORLD WEALTH REPORT, Capgemini, June 2022

現代の富裕層は、投資によって単に利益を上げるだけでなく、社会貢献性を求める傾向があります。社会貢献に対する意識や社会分断や格差の傾向への懸念から、投資先には財務情報だけでなく「Environment=環境」「Social=社会」「Governance=企業統治」の3つを合わせたESGを意識しているのです。

社会貢献性のある「ESG投資」と「インパクト投資」とは

私たち個人ができる社会貢献性のある投資には、注目されているESG投資に加え、インパクト投資があります。それぞれの特徴について紹介します。

ESG投資

ESG投資は、従来の投資において評価の中心となっていた財務情報だけでなく、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)など、非財務情報も考慮した投資のことを指します。

2016年に国連事務総長が金融業界に提唱したPRI(国連責任投資原則)により、投資に対しESGの視点を組み入れることを求めるようになりました。このPRIは、2022年10月現在、世界5,220の機関が署名しており、年金基金など大きな資産で運用する機関投資家を中心に個人投資家にも、ESGを評価して投資を行うという考え方が普及しています。前述した富裕層の投資に対する社会貢献を求める意識の変化も、このあたりに端を発しているといえるでしょう。

環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)それぞれの主な課題は以下の通りです。いずれも企業が持続可能性を確保するうえで不可欠な課題であり、これら課題に対する企業の具体的な取り組みを評価し、投資を行います。

ESG投資におけるE、S、Gそれぞれの主な企業課題

ESG 課題
E:環境(Environment) CO2排出などによる地球温暖化、資源枯渇、水不足・水質汚染対策、化学物質・廃棄物管理、生物多様性の保全など
S:社会(Social) 人権問題、労働基準、ダイバーシティ、製造物責任、地域社会との関係、従業員の労働管理・安全衛生、人的資本など
G:ガバナンス(Governance) 取締役会の独立性、役員報酬の有効性、コンプライアンス、社会制度の頑健性、情報開示の透明性など

投資先の選定にあたり、企業のESGを評価するには、IR情報など、企業のホームページで紹介されているESG各課題への取り組み実績を参考にできるでしょう。また、ESG投資をテーマにした投資信託、ETFへの投資も有効です。

インパクト投資

インパクト投資とは、貧困層の支援や教育機会がない子供の教育支援など、社会的または環境的な課題に取り組む企業に経済的リターンと目標達成の両立を目指す投資です。

インパクト投資もESG投資の1つですが、ESG投資が環境や社会への配慮に対し示される企業の規範やガバナンスから投資対象を選定するのに対し、インパクト投資は社会的課題の実際の解決を目的とするため、インパクト(影響)を測定し、目標達成のために投資を行うという特徴があります。

実際にインパクト投資を行う際にも、やはり企業のホームページにあるサステナビリティへの取り組みを参照すると投資先を選択する際の参考になります。また、インパクト投資をテーマにした投資信託、ETFもありますので、投資をする際の選択肢の1つとなるでしょう。

投資テーマを確認。社会貢献できる投資の具体例

ESG投資やインパクト投資は、ETNや投資信託を通して行うことができます。各商品の運用方針については目論見書やレポートの内容を必ず確認しましょう。なかには「サステナビティ」というキーワードを入れることであたかも環境に配慮した投資信託に見せているようなものもありますので、注意が必要です。また個別の株式に投資する場合は先述の通り、企業のIR情報やホームページ等をしっかり確認しましょう。

投資テーマや三菱UFJモルガン・スタンレー証券で取り扱いのある社会貢献をテーマにした商品は下記リンク先にてご紹介しております。具体的な商品選択の際にはご参考にしてはいかがでしょうか。

株式や投資信託への投資を通して社会貢献できる

ESG投資やインパクト投資は世間でも注目されてきており、投資対象として考える投資家も増えてきています。投資が単なる利益追求だけでなく社会貢献につながれば、その資金は何倍も有意義なものとなるでしょう。ESGに取り組む企業の業績が向上して株価が高く評価されれば、参加する企業が増えて世界的課題の解決がさらに前進する好循環を生みます。

最近は株式も1株から手軽に投資できる仕組みも広がりつつあり、投資信託も1万円程度から投資可能です。ESG投資やインパクト投資は決して富裕層だけが行うものではありません。ふだんは積極的に投資をしていない方も、社会貢献性という視点から、投資の意義についてあらためて考えてみてはいかがでしょうか。

丸山優太郎

丸山優太郎

丸山優太郎

日本大学法学部新聞学科卒業のライター。企業系サイトを中心に執筆し、得意執筆領域は金融・経済・不動産。市場分析や経済情勢に合わせたトレンド記事を、毎年約200本執筆している。主な掲載媒体は「YANUSY」「THE Roots」「Dear Reicious Online」「JPRIME」「REALIA」「ZUU online」など。

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