2023年注目の投資テーマは? 脱炭素・農業・・・分野別に解説

2023/5/23
2023年注目の投資テーマは? 脱炭素・農業・・・分野別に解説

2022年は、加速するインフレに対応するために各国で金融引き締めが行われ、株式相場には不透明感が滞留しました。投資家にとって、常にリスク回避への意識を高めておく必要があった一年と言えるでしょう。果たして2023年もこのような状況は続くのでしょうか。また、どのような相場テーマに注目が集まるのでしょうか。2022年の相場を振り返りつつ2023年の相場動向や注目テーマをまとめていきます。

本記事は、三菱UFJモルガン・スタンレー証券ウェルスマネジメントリサーチ部が2022年12月9日に発行した投資レポート「2023年 グローバル市場の投資環境と見通し 新春特別号」を参考に、株式会社ZUUが編集・執筆して制作したものです。

2023年終盤には相場の不確実性が解消か

2022年の日米の株式相場は、年初より大幅に値を下げて着地しました。世界規模で加速するインフレに対応するため、米連邦準備理事会(FRB)は、市場の想定を上回るペースで利上げを断行しました。株式市場には世界経済の先行きや金融政策に対する不透明感が漂い、投資家は常に相場下振れのリスクを意識しながらの投資行動を余儀なくされました。

しかし、足元の米消費者物価指数(CPI)の前年比伸び率はピークアウトした可能性が高まっており、各国の金融引き締めペースは減速傾向にあります。2023年の投資環境のポイントは、先進国の中央銀行が目標として掲げる「インフレ率2%」への道筋が見えるかどうかでしょう。

この点では、中国の「ゼロコロナ」政策解除で上昇圧力がかかりやすい資源価格の動向、世界経済の減速の度合いなど不透明な部分が依然少なくありません。2023年の半ばごろまでは2022年と同様に不確実性の高い状況が続きそうですが、それでも中長期的なインフレ予想が安定していることから、2023年の終盤には、インフレ率が目標の2%を見通せる水準まで低下してくると見込まれます。金融引き締めの転換に向けた期待が高まるにつれ、株式市場は底堅さを増すでしょう。

リスクは、各国の労働市場の動向です。このまま金融引き締めが続けば、やがて失業率は上昇に転じ、雇用者数の増加や賃金上昇も減速することが予想されますが、仮に強すぎる労働市場が続く場合、インフレ率2%の達成は遠のき、政策金利は上振れるかもしれません。

日本市場に関しては、日本銀行の金融政策の動向が焦点になりそうです。日銀は2022年12月、長期金利の変動許容幅を従来の±0.25%程度から±0.5%程度に拡大し、イールドカーブ・コントロールの運用を見直しました。依然としてグローバルな金利上昇圧力が高いため、イールドカーブ・コントロールのさらなる変更は日本の長期金利の急上昇や円高を招くリスクもあり注意が必要です。金融政策や為替市場の不確実性は増していますが、日本企業の業績に関しては以下のような好材料も期待されます。

  • 供給不足の改善
  • 資源価格高騰の一服
  • 経済正常化の進展
  • 中長期的な設備投資需要の増加

企業による自社株買いなど株主還元の強化もみられれば、株式市場の下支えが期待されるでしょう。

  1. 長短金利操作(YCC)。短期金利(政策金利)をマイナス0.1%、長期金利を0%近辺に誘導する日銀の金融政策。

世界の問題を解決に導く企業に注目

ここからは、2023年注目の投資テーマについて述べていきます。冒頭でも触れた通り、2022年の株式相場は、常にインフレ圧力による下振れリスクにさらされてきました。しかしインフレや利上げのピークアウトが少しずつ見え始めたことで、株式相場の夜明けが徐々に近づいていると思われます。企業の成長ストーリーを考える際に注目したいのは、メガトレンド(長期的潮流)です。

近年、世界は高齢化や人口増加、気候変動への対応に加え、サプライチェーン(商品の製造から販売までに必要な物流ネットワーク)の再構築を迫られており、これらの問題を解決の方向に導く企業が株式市場でも存在感を高めることになりそうです。具体的には、脱炭素や自動化・省人化、農業、ヘルスケア関連の企業などへの注目度が今後一層高まることが予想されます。

ここからは、各分野の特徴を解説していきます。

脱炭素

各国政府は、2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)の達成を目指しています。2023年の株式市場でも引き続き「脱炭素社会」の実現に貢献したり、貢献できる技術を保有していたりする企業に注目が集まるでしょう。中でも、化石燃料発電の代替になる再生可能エネルギー関連企業への注目は続きそうです。

また温室ガスの排出抑制のほかに消費電力自体の削減にも関心が集まる可能性もあります。具体的には、以下に関連する企業が注目されることになりそうです。

  • 太陽光や風力による再生可能エネルギー
  • 水を電気分解して精製されるグリーン水素
  • 電気自動車(EV)
  • 半導体の消費電力削減、二酸化炭素の回収・利用・貯蔵技術

自動化・省人化

世界では、パンデミックや地政学的リスクの高まりを背景にサプライチェーンの再構築が急務となっています。しかし2022年は再構築が道半ばだったため、半導体を中心に一部資材や部品の供給が滞りました。ウクライナ問題による地政学的リスクの高まりもあって、各国は自国内の製造能力を高める施策を進めています。注目は、製造拠点内の自動化・省人化への需要増加です。

日本や欧州、あるいは中国でも生産年齢人口の減少に対する危機意識が高まっています。各国は、労働不足問題を抱えながら製造技術の向上や開発力の強化を進めることになるでしょう。その達成に向け、高精度の自動化・省人化システムへの引き合いが強まるものと思われます。特に2023年は、以下のような関連企業の注目度が高まりそうです。

  • AI(人工知能)を搭載した高度な工作機械
  • 搬送工程の自動化
  • 生産ラインの無人化を実現する産業用ロボット

また、人と同じ空間で働く「共働ロボット」への期待度も増すことが予想されます。

農業

世界は、コロナ危機やウクライナ危機によって食糧安全保障への意識をより高めています。世界的な人口増加を背景とした食糧需要の増加が確実視される中、安定的な食糧供給や食糧確保へのニーズが一段と高まりそうです。これまで人類は、灌漑(かんがい)設備をはじめとしたインフラ整備、農薬開発、農業機械の進化などによって食糧需要の増加に対応してきました。

現在の地政学リスクの高まりや気候変動に対応しつつ、食糧需要の増加に対応していくためには、農業分野のイノベーションが不可欠です。食糧問題への意識の高まりを背景に近年は、テクノロジーを駆使した農業、いわゆる「アグリテック(アグテック)」への注目度が高まりつつあります。そのほか収穫量の拡大を目的としたゲノム編集技術など、食糧問題の解決に向けたブレイクスルーになり得る技術やサービスを提供する企業は、市場からの注目をより一層集めることになるでしょう。

ヘルスケア

主要先進国では高齢化の加速、新興国では人口増加が深刻な社会問題になっています。今後は、中国などの新興国の一部でも高齢化が進むことが予想されるため、世界の医療需要は増加傾向が続くでしょう。医療技術の分野では、市場規模が大きい「がん」や「糖尿病」に関してバイオテクノロジーを活用した治療法の開発に注目したいところです。

またビッグデータを活用することによる臨床研究の期間短縮化の分野も成長が期待されています。さらに高齢化による社会保障費の増加を受け、医療制度の効率改善を求める声が次第に高まりつつあります。その点で医療サービスの効率化を促進させるITサービスも注目されそうです。医療関連の支出は、人の生命や健康に関わるため景気の波の影響を受けにくい特徴があり、長期的に見ても安定的な成長が期待できるでしょう。専門性や技術力が高いヘルスケア関連企業は、今後も価格決定力を保つ可能性があり、中長期的な投資対象として注目が続くことになりそうです。

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