次世代医療への挑戦 次世代医療への挑戦

先端技術の導入で、医療は次のステップへ。 先端技術の導入で、医療は次のステップへ。

遺伝子解析で低減する遺伝性疾患のリスク 遺伝子解析で低減する遺伝性疾患のリスク

2003年に解読が完了した人間の遺伝子情報であるヒトゲノム。その解析技術は年々進歩し、より安価に、より早くできるようになってきています。現在、解析の費用は600ドルから1,000ドル、10万円前後ですが、近い将来には3,000円程度、1時間足らずで解析できるようになるでしょう。

遺伝子解析が身近なものになるに従い、医療や予防に利用する動きも活発になっていて、すでにアメリカでは、遺伝子検査を受けることが当たり前になりつつあります。自分の遺伝子を調べることによって、糖尿病やアルツハイマー型認知症をはじめ、ある種のがんなどの遺伝性疾患のリスクを知ることができ、医師は治療の道筋を立てやすくなるのです。

私自身も自分の遺伝子を調べて、こうした疾患のリスクを把握していますが、リスクが比較的低く、また、発症するかどうかは、生活習慣や環境の影響も大きいことから、今のところ対策をとってはいません。しかし、がんの発症に与える飲酒や喫煙などの影響が、他に比べて何倍も大きくなるという遺伝子タイプもあるので、遺伝子を知ることはやはり大切で、それぞれの人に合わせたオーダーメイド医療の前提になるものといえるでしょう。

AIが見つけてくれるがんの原因と治療法 AIが見つけてくれるがんの原因と治療法

このように遺伝子解析は大きな働きをしますが、問題はがんです。実は、多くのがんは遺伝子を調べただけでは、発症の原因などがつかめません。それは遺伝子の異常や変異が見つからないからではなく、あまりに多く見つかるので、かえって理解を難しくしているからなのです。しかも、がんになるかどうかは、喫煙やウイルス感染、放射線などの環境因子、加齢によっても変わり、がん自体も進化するので、さらに難しくしています。がんは非常に複雑で、「がんの理解は人知を超えている」と言う研究者もいるほどです。

その一方でがんに関する研究は盛んで、2017年1年間に発表された論文は20万を超えています。これらの論文と、遺伝子の異常や変異の情報とを結びつけて、がんの治療に役立てる取り組みがこれまでもなされてきたのですが、人間の力では限界があり、時間もかかりすぎます。そこで考えたのがAI、人工知能を活用することでした。

2015年から始めた取り組みでは、IBMの「Watson(ワトソン)」の機械学習技術や自然言語処理技術を使って、アメリカの医学・生物学系の論文のデータベースに登録された約2,700万件の論文、薬に関する約1,500万件の特許などと、遺伝子の情報を分析。その結果、がん患者の正確な病名や原因をわずかな時間でつきとめ、治療に役立てることができました。

次世代の医療のために取り組むべきこととは 次世代の医療のために取り組むべきこととは

遺伝子解析の普及、AIやスーパーコンピュータの活用によって、医療は新たな展開を見せようとしています。個人の遺伝子情報を集めたデータベースが整備され、民間の事業者が幅広く利活用できる仕組みができれば、治療法や治療機器の開発、創薬コストの低減といったことが期待できるでしょう。

しかし、ゲノム調査が普及すれば、遺伝子情報による個人への差別につながる恐れもあります。遺伝子情報の円滑な利用を実現するには、利用にあたってのルールづくり、法整備が欠かせません。現在の状況は、言ってみれば遺伝子解析という高性能の自動車が新たに開発されたのに、それに見合う道路交通法が整備されていないのと同じなのです。ヨーロッパでは、遺伝子情報は患者に帰属し、研究などへの利用を認める権利も、拒否する権利も患者にあるというルールが標準になりつつあります。また、遺伝子解析によって、現状では治療法のない疾患や、遺伝性の高い疾患にかかる可能性がわかった場合に、患者本人に伝えるのか否かといった、正解がなかなか見つからないデリケートな課題への対処も考えていかなければなりません。アメリカは、遺伝子検査の普及に先立つ2011年から、医師に対する教育プログラムづくりに取り組んでいます。日本は今後、医療関係者への教育の整備とともに、国民のコンセンサスづくりも必要です。私も厚生労働省のがんゲノム医療推進コンソーシアムに参加しましたが、現在行政では国民参加型のゲノム医療推進について審議を進めています。

遺伝子を調べることが、現在行われている健康診断のように、医療や健康づくりの基礎になる時代が間もなく訪れようとしています。先行している欧米の事例を研究し、より良い形で遺伝子情報の利活用を進めることができれば、わが国の医療水準はさらに高まり、より健康で質の高い生活の実現に結びつくに違いありません。

インタビューの内容は、当社の見解等と異なる場合があります。また先進医療に関する情報提供のみを目的とするものです。
本インタビューは2018年8月に行われたものです。

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